学習カリキュラムレベル112

なぜ投資が必要なのか

インフレによるお金の目減り、低金利、人生100年時代という3つの背景から、投資が必要とされる理由と複利の力を学びます。

「銀行に預けておけば安心」は本当か

新社会人としてお給料をもらい始めると、多くの人がまず銀行口座にお金を貯めていきます。日本では長らく「貯金こそ堅実」という考え方が主流でした。しかし、いまの経済環境では「預金だけ」にもリスクがあることを知っておく必要があります。キーワードは、インフレ、低金利、そして人生100年時代の3つです。

インフレ:お金の「実質的な価値」は目減りする

インフレとは、モノやサービスの値段(物価)が継続的に上がっていくことです。物価が上がるということは、裏を返せば「同じ1万円で買えるものが減る」ということです。

例えば、いま500円で食べられるランチが、年2%のインフレが続くと10年後にはおよそ610円になります。手元の500円玉は10年後も500円のままですが、もうそのランチは買えません。額面は減っていないのに、買える量が減る。これを「実質購買力の低下」と呼びます。

日本でも2022年以降、食品や電気代などの値上げを実感する場面が増えました。仮に年2%のインフレが20年続くと、物価は1.02の20乗 ≒ 1.49倍になります。つまり、現金100万円の実質的な価値は、20年後にはいまの約67万円分にまで目減りする計算です。何もしないでお金を置いておくことは、「ノーリスク」ではなく「インフレに負けるリスク」を取っているとも言えるのです。

インフレ電卓さわって学ぶ

いまの購買力100万円

20年後の実質的な購買力67万円(−32.7%)

額面は変わらなくても、同じ金額で買えるモノの量がこれだけ減ります。

将来のインフレ率は変動します。一定率が続いた場合の理論値です。

低金利:預金の利息ではインフレに追いつけない

では、銀行預金の利息でインフレ分を取り返せるでしょうか。2026年時点の日本では、政策金利の引き上げにより預金金利も以前よりは上がりましたが、それでも普通預金の金利は年0.3%前後の水準にとどまる金融機関が多いのが実情です。

仮に金利0.3%で100万円を1年間預けても、利息は3,000円(税引き前)です。一方、物価が2%上がれば、生活コストは年間で数万円単位で増えることもあります。預金は「元本の額面が守られる」という大きな安心感がある一方で、インフレ局面では実質的な価値を守りきれない可能性が高い、という弱点を持っています。

人生100年時代:お金に働いてもらう時間が長い

日本人の平均寿命は延び続けており、いまの20代には「100歳前後まで生きる」ことを前提にしたライフプランが現実味を帯びています。長生きは喜ばしいことですが、その分、老後に必要なお金も増えます。公的年金は老後の柱ですが、年金だけでゆとりある生活費のすべてをまかなえるとは限らず、自分で準備する部分の重要性が増しています。

ここで朗報があります。若いうちに始めるほど、「時間」という最大の武器を使えることです。その武器の正体が複利です。

複利:利益が利益を生む雪だるま

複利とは、運用で得た利益を元本に組み入れて、その合計にさらに利益が付いていく仕組みです。最初は小さな差でも、時間が経つほど雪だるま式に膨らんでいきます。

便利な目安として「72の法則」があります。72を年利(%)で割ると、資産がおよそ2倍になるまでの年数が分かるという概算式です。

年利資産が2倍になるおよその年数
0.3%(預金水準の例)約240年
3%約24年
5%約14.4年
7%約10.3年

例えば、毎月3万円を年利5%で運用できたと仮定すると、30年後の元本総額1,080万円に対し、資産は約2,500万円に育つ計算になります(税金・手数料は考慮していません)。増えた分の多くは、後半の年数で複利が生み出したものです。だからこそ「早く始めて長く続ける」ことが、投資でもっとも再現性の高い戦略のひとつとされているのです。

ただし、注意点があります。ここでの年利5%はあくまで仮定の数字であり、株式などへの投資のリターンは毎年変動し、マイナスになる年も普通にあります。投資に「必ず儲かる」はありません。リターンの可能性は、常に価格変動というリスクとセットです。この点は次章以降でじっくり学びます。

複利シミュレーターさわって学ぶ

累計元本(点線)

720万円

20年後の評価額(実線)

1,233万円

運用収益

+513万円

教育用の単純化したシミュレーションであり、将来の運用成果を保証・予測するものではありません。

国も「資産形成」を後押ししている

日本では、個人の長期的な資産形成を支援するために、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度が整備されています。通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、これらの制度を使うと一定の範囲で非課税になります。詳しくは第5章で解説します。なお、これらの制度は2026年時点の内容に基づいており、制度は変更されることがあります。

まとめ

  • インフレが続くと、現金や預金の「実質購買力」は少しずつ目減りする
  • 2026年時点の預金金利ではインフレ分を取り返すのは難しい水準にある
  • 人生100年時代では、老後資金を自分で準備する重要性が増している
  • 複利は「利益が利益を生む」仕組みで、若く始めるほど時間を味方にできる(72の法則が目安)
  • 投資はリターンの可能性とリスクが常にセット。「必ず儲かる」はない
章末クイズ(4問)

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1. インフレが年2%で続いた場合、現金をそのまま持っているとどうなりますか。
2. 「72の法則」の説明として正しいものはどれですか。
3. 複利の説明として最も適切なものはどれですか。
4. 投資の必要性について、この章の説明として正しいものはどれですか。

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